宇宙からの帰還

先日TVでアポロ13のクライマックスシーンで、地球への再突入時に指令船が空気の断熱圧縮*1によって真っ赤になるシーンを見ながら、この熱(エネルギ)はどっから来たんだ?と妄想開始。結果として、運動エネルギと位置エネルギしかないだろとの結論に至りました。と、言うわけで早速計算です。




計算条件
アポロの指令船の資料が見当たらなかったので、スペースシャトルで計算してみました。
スペースシャトルオービタの再突入時質量:90t
・軌道速度:8.0km/s
・高度:300km


位置エネルギ=90000(kg)*9.8(m/s^2)*300000(m)=264600000000(J)*2
運動エネルギ=0.5*90000(kg)*8000(m/s)*8000(m/s)=2880000000000(J)*3
合計3144600000000(J)=3兆1446億(J)


なんか、偉くデカイエネルギ*4ですな
基本的にこれが全部熱になるんだからエライ熱になりそうだな
まず計算しやすいようにJをカロリーに変換*5


3144600000000(J)/4.19(cal./J)=750501193317(cal.)


で、スペースシャトルはたぶんほとんどどアルミ*6とチタン*7の塊だから比熱を0.2とすると。


750501193317(J)/90000000(kg)/0.2(cal/g・℃)≒41694℃


4万℃かよ!こりゃ熱いはずだ。
実際はこの熱のほとんどは大気が奪って行くんですが、大気が奪いきれない残った熱で船体が赤熱するわけです。地球に大気があって本当に良かったですな。
では、大気の無い月等の星に着陸はどうすんじゃ!と言われそうですが、ご安心ください。空気が無い場合は着陸するためにスラスタ(主にロケットエンジン)を使用して減速するんですが、このとき放出する推進剤が熱を奪って行ってくれるので、乗組員は焼き鳥*8にならなくてすむわけです。

さてここでひとつ忠告を、もし反重力推進等の推進剤を使用しない推進器を装備した宇宙人の乗り物に乗る機会があった場合、天体への着陸はじっくり時間をかけてもらいましょう、さもないと確実に焼き鳥になれます*9(了)

*1:ご存知ない方も多いかと思いますが、宇宙船が大気に再突入する時に発生する熱は、空気との摩擦影響は少なく、ほとんどが進行方向の空気が圧縮される事によって発生する断熱圧縮による熱なんです。

*2:位置エネルギー=質量×重力加速度×高さ E=mgH 詳細は高校の理科1の教科書参照

*3:運動エネルギー=0.5×質量×速度×速度 E=0.5*m*V^2 詳細は高校の理科1の教科書参照

*4:大雑把にいって、7500tの0℃の水を沸騰させる事が出来るエネルギ

*5:この変換式に関しては中学の理科の教科書参照の事。つーかこれぐらい理工系人間じゃ無くても覚えておこう

*6:比熱:0.21cal/g・℃

*7:比熱:0.126cal/g・℃

*8:推進剤が熱を奪ってくれなければ、焼き鳥どころかプラズマになって強い光を発して蒸発しちまいますが

*9:反重力推進なんてものを開発出来る連中にとっては、エネルギ保存の法則は、些細な問題なのかもしれませんが。